良い課題が見つかる「0次分析」の基本レシピ、その1は「市場と購入者を理解する0次分析の基本」、その2は「ヒット商品を発見できるシェア上昇分析とは?」をご説明しましたが、今回はその3「購入者の洞察」について詳しくご説明します。
購入者の洞察では、購入者のライフスタイルや、ブランドスイッチ先の商品を確認します。期間併買分析では購入者が対象商品以外にどのような商品を購入しているかを見ることで、購入者のライフスタイルを洞察できます。また、自社/競合のスイッチ分析により、真の競合商品は何なのか?が分かります。我々が意図しない商品が競合として浮かび上がることもあります。これらの分析を通じて、購入者がどんな生活をおくりどんな選択をしているかを理解していきます。
期間併買分析で購入者のライフスタイルをみる
例として、まつげ美容液購入者の期間併買をみてみましょう。 下図は、まつげ美容液購入者が1年間に併買した基礎化粧品カテゴリのうち、購入傾向が高い商品です。
まつげ美容液購入者はパックやネッククリーム、アイクリーム、マスカラリムーバーなど、 部分ケア用品の購入傾向が高いという結果が出ています。その他のカテゴリを分析してみても、メイクアップ化粧品カテゴリではマスカラ下地やアイブロウ美容液などの部分ケア用品、石鹸類カテゴリでは化粧スポンジ専用クリーナーの購入傾向が高く出ています。
さらに、購入傾向の高い商品の平均価格を見てみると、いわゆるプチプラと呼ばれる低価格商品でした。「部分ごとに細かくケアする代わりに、価格は安く抑えている」ライフスタイルが見えてきます。
これまで仮説に基づき設計していたペルソナも、こうして実データから設計できるのです。まつ毛美容液購入者は「部分ケア用品」にも興味が高いことが分かるため、 「部分ケア用品」に対しての検索意向が高い人を広告のターゲティング先にすることで、より効果の高い広告が可能になります。
スイッチ分析で真の競合を知る
下図は基準期間にA社のオールインワンを購入していた人が、直前直後にどの商品を購入していたのか、スイッチ分析の結果です。
これを見ると、直前6ヶ月でも35%がA社のオールインワンを購入、直後6ヶ月でも19%が同商品を購入していることから、同商品のリピートやA社商品の買いまわりをする人が多いことがわかります。しかし直後6ヶ月ではB社オールインワンへの流出が25%もあるため、留意すべき競合といえるでしょう。
これらID-POSデータによる購入者洞察のメリットとして以下の3つがあげられます。
1.数百万人以上の調査で、正しい“購買者の実態”を把握できる
2.仮説を持たずに、新しい“発見を得る”ことができる
3.新規/継続/スイッチを、継続的な“KPI”として利用できる
特に、2はID-POSデータ(ビッグデータ)ならではの特長です。例えばこれまではペルソナ作成の根拠データとして、インターネット会員に対するアンケートやインタビューなどが活用されてきました。これらの調査は意識を探る意味で非常に有効ですが、調査バイアス(偏り)が非常に大きく、サンプル数も数千程度と非常に少なかったため、代表性にかけるという問題点がありました。そのため、現在では標本数が少ないインターネット調査を行う前に、数千万人規模の母数を誇るID-POSデータを組み合わせることで、調査企画者の主観による間違った仮説設計や、標本数の少なさや調査バイアスによる不正確さを回避し、より効果的なペルソナを作成できるようになっています。