「ID-POSを活用しよう!」と昨今よく聞くけれど、そもそもID-POSってなんだろう?そんなふうに思っている方に向けて、いまさら聞けないID-POSの基本のキを解説します。
「POS」には3つある?
ID-POSについてお話するまえに、「POS」について、おさらいしておきましょう。POSはポスと読みます。ピーオーエスではありません。POSは、Point Of Salesの頭文字をとったものです。英語そのままの意味では「販売時点」ですが、一般に、「販売時点情報管理」と訳されます。
世の中で「POS」というと、3つの意味が混在して使用されている場合があるので、はじめに整理しておきましょう。
1つめは「POSシステム」の略です。販売時点(レジ精算時)に「いつ」「何が」「いくつ」売れたのかを記録して、そのデータを処理、蓄積するという一連の流れをコンピュータによってシステム化したものが、「POSシステム(販売時点情報管理システム)」です。「わが社はPOSを導入した」などと言う場合は、POSシステムのことを指しています。
2つめは「POSレジ」の略。POSシステムにおいて、販売時点(レジで精算時)に「いつ」「何が」「いくつ」売れたのかを記録するための端末です。商品コード※1を読み込む機能がついており、それによって、「何が」売れたのかがわかるというわけですね。「うちの店、POSをもう1つ入れたんだよね」などと言う場合は、POSレジのことを指しています。
そして3つめが「POSデータ」のことです。POSシステムにおいてPOSレジを通して記録された「いつ」「何が」「いくつ」売れたのかという情報のことを指します。「ちゃんとPOSを見て品揃えを考えなきゃ」と言った場合は、「POSデータ」のことを指しています。近年POSデータ活用が進んだこともあり、POSといったらこの「POSデータ」を指すという場面も増えてきました。
※1 現在、商品コードとして広く利用されているのがJANコードです。1978年に日本標準規格のバーコードとして標準化されPOSレジ普及を後押ししました。
モノ余りの時代、品揃えに活用されるようになったPOSデータ
さて、本題に入る前にもう1つ。POSシステムの歴史について簡単に触れておきましょう。POSシステムは、扱う商品数も多く、なにかと「どんぶり勘定」になりがちな小売業において、正確に金銭と売上の管理を行うためのシステムとしてアメリカで開発されました。そして日本において、このPOSシステムによって得られるPOSデータを「品揃え」決定のツールとして、1980年代にいちはやく現場に取り入れたのがコンビニ※2です。
みなさんご存じのとおり、コンビニの売り場は小さく、置ける商品は限られています。そのようななか、「仕入れる商品と在庫を減らし、売り上げを上げよう」と考えました。ではどうするか? それは、「たくさん売れているもののみを置き、あまり売れていないものは置かないようにする」ということでした。
そのために利用したのがPOSデータです。商品単品ごとの売れ行きをデータによって正確に把握し、よく売れている商品(売れ筋)を並べ、よく売れていない商品(死に筋)を置かないようにする(カットする)という手法を武器に、コンビニは飛躍的な成長を遂げました。そして、モノがなく、「置けば売れる」という時代から、消費者が本当に欲しいものしか売れないモノ余りの時代へと移るなか、小売業やメーカーがPOSデータを活用することが一般的となっていったのです。
※2 1980年代初頭、業界に先駆けてPOSシステムを導入するとともにPOSデータを活用したのがセブン-イレブンです。それによって、大幅な在庫減と売上増の両立を達成しました。
ID-POSはPOSデータに顧客IDが紐づいたもの
前置きが長くなりましたが、いよいよ「ID-POS」のお話しにはいりましょう。「ID-POS」はアイディーポスと読みます。「顧客ID付きPOS」と呼ばれることもあります。そして、「ID-POS」と言った場合、顧客ID付きの「POSデータ」のことを指していることが一般的です。
では「顧客ID」とはなんでしょうか?それは、ポイントカードの利用者を識別するIDです。ポイントカードが利用できる店では、精算する前に「ピッ」とポイントカードをレジで通しますね。その際に、どのポイントカードの利用者に対して売ったのか、つまり「誰が購入したか」という情報が認識されます。このようにして得た、「誰が」「いつ」「なにを」「いくつ」買ったのかという情報がID-POSなのです。
では、この「誰が」という情報がついたID-POSで、どんなことがわかり、何ができるのでしょうか? それは、後半で解説していきます。