POSデータとID-POSデータの違い

ID-POSで「顧客」を軸にした分析を行おう

POSデータ:「商品」を軸に「売れた」という販売情報を把握
POSデータのPOSとは「Point-of-Sales(ポイント・オブ・セールス)」の略で、商品を販売した時点での情報を取得し、「何が」「いつ」「どこで」「いくつ」「いくら」で売れたのかを把握することができます。

ID-POSデータ:「ID」がつくことによって「顧客」を軸に「買った」という購買情報を把握

ID-POSデータでは、「ID」という個人を識別するための番号が付加されることによって、
「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「いくつ」「いくら」で買ったのかを把握することができます。「誰が」という情報から、「顧客」を軸にした購買情報を知ることができるのです。小売業が提供している「ポイントカード」などが代表的です。これによって、顧客の継続的な購買行動もわかります。

では、POSデータの活用とID-POSデータの活用の違いを見てみましょう。

POSデータの活用

POSデータの活用で非常に分かりやすい例は「売れている商品」「売れていない商品」を発見することです。

小売業では、売れている商品をお店で取扱い、より売れるように仕掛けを行い、メーカーは、少しでも自社の商品がPOSデータで上位にくるように商品の売り込みを小売業に行います。「売れていない商品」は販売効率が悪いのでカット対象となるため、メーカーは「売れない商品」のレッテルが貼られないように必死になります。

販売効率を踏まえて商品の品揃えを考える場合、以前は「売れている商品」「売れていない商品」を知ることが主流でした。そのために小売業では「ABC分析」が採用されていました。

ABC分析」は「重点分析」とも呼ばれ、沢山ある商品を大事な順に優先度をつけて分類していく分析手法です。例えば、累積の売上高割合が70%を占める商品グループをA、70%~90%の商品グループをB、90%~100%の商品グループをCという様に分類します。
「新製品を発売したのに棚からカットされた」となげく背景にはこのABC分析で「Cランク」になってしまった商品です。

POSデータが活用されるようになり、商品のライフサイクルは短くなったのかもしれません。みなさんも「気にいっていた商品」が売り場になかったという経験があるでしょう。

ID-POSデータの活用
ではID-POSデータを使うと何が変わるのでしょうか?

下の図のように、発売して1カ月程度でPOSデータから「売れている、売れてない商品」を識別できます。しかし「売れ続けるかどうか」は、わかりません。一方で売れていないと思った商品がジワジワと売れてくることもあります。

ID-POSデータは買った人のIDに紐付いたデータなので、例えば、その商品を購買している顧客がどんな顧客か分かります。
その商品を購入した顧客が、1ヶ月当りの購買金額が非常に高い「優良顧客」で、その商品を継続して購買している場合、もしその商品をカットしてしまうと、その顧客は欲しい商品を品揃えしている競合店に流出してしまう可能性があります。

また、同じ顧客が繰り返し購入するようなリピート率が高い商品の場合、その商品を気に入っているということがわかるため、今後も継続して売れ続ける可能性が高いといえます。
このような商品は、カットすべきではないと判断すべきでしょう。
従来のPOSデータによる「ABC分析」では、Bランク下位からCランクの商品を、カット対象の商品と判断されていたかもしれません。
ID-POSデータを使う事により、品揃えの概念が変わるのです。

また、ID-POSデータは購買者の特性(性、年代、購買頻度・・等)がわかるので、ターゲット像の把握が可能になります。また、継続購入、ブランドスイッチ(流入/流出)、購入間隔等がわかるので、競合対策や販促タイミングを踏まえた販売促進のプランニングができます。
※ブランドスイッチとは、顧客が購買してきた商品とは異なる、別のメーカーの商品を購買し始めることです。流入とは、その前に購入していた商品の把握、流出とは、その後に購入した商品の把握の意味しています。

以上の事から、メーカーでは、STP(セグメンテーション/ターゲティング/ポジショニング)マーケティング、小売業への品揃え提案や販促提案、或いは、広告戦略の立案・見直しなどが可能になります。また、小売企業でも同様な戦略立案を行えます。